ライアンエア


RYANAIR 
http://www.ryanair.com/en



売上高、乗客数、どちらもヨーロッパNo.1のLCCです。
近年、燃料費の高騰により値上げを行うLCCが多い中、ライアンエアはひたすら低価格に拘り、「安さ」を売りにした経営スタイルを貫いています。それ故、近年は自らを「ULCC」(ウルトラローコストキャリア)と呼ぶようになっています。
いろんな意味でとても個性的な経営を行っていることから、固定客が多い一方でアンチな人も数多い、というなかなかキャラの立ったLCCです。

特徴

最大手だけあって、「ヨーロッパのLCCあるある」のようなエッセンスがギュッと詰まっています。
・運賃が激烈に安い
運賃の安さにかけては、ライアンエアの右に出るLCCは1つもありません。
2012年度のライアンエアの公表値では、乗客1人の平均運賃は「45ユーロ」だとのことで、有り得ない安さです。
ちなみに、同資料では、ライバルのイージージェットは71ユーロ、ルフトハンザやエールフランスは200ユーロ以上だとのことです。 
「ライアンエア以外は全て高い」と言い切ってしまうこの我の強さが素敵


追加費用は激烈に高い
ライアンエアは「運賃を安くする一方、追加費用を高くする」という明確なスタンスを取っています。かつて、創業者のオライリー会長も「ポップコーンとかで稼ぐシネコンみたいな経営を目指す」と明言しておられました。
BBC News – Sunday, 13 May, 2001 ” Flying for ‘free’ on Ryanair”
http://news.bbc.co.uk/2/hi/business/1328597.stm
よって、チケット代金以外の「追加費用」は悪意を感じるほど高くなっています。例えば、荷物の重量制限を超過すると、何と1kgあたり20ユーロの追加費用を取られます。荷物が5kgオーバーなら即刻100ユーロが飛んでいきます。こうなると、もう普通にエールフランスとかを使った方が安いです。また、フライトを変更するにはコールセンターに電話するしかないのですが、この電話が何と有料ダイヤルになっており、名前とかフライトを伝えているとすぐに数千円になります。「変更するより新しく買った方が安かった」という全然笑えない笑い話も現実に発生します。
ということで、利用者としてはうまく追加費用をかわせるかどうかが勝負どころになります。

余談ですが、上記のプレゼン資料で「1人当たりの運賃は45ユーロ」とエラそうに言っていますが、財務諸表を見てみると「1人あたりの売上高は62ユーロ」とシレッと書かれています。つまり、1人あたり17ユーロの追加料金を払っていることになります。 搭乗が終わった後で、17ユーロ未満に押さえられていたら勝ち、ということで良いかと思います。
追加費用の一覧はここに記載されています
http://www.ryanair.com/en/terms-and-conditions#regulations-tableoffees 

・空港が町から遠い
このサイトでも例として多用している「フランクフルト」ハーン空港を始め、「バルセロナ」ジローナ空港、「ストックホルム」スカヴスタ空港など町から遠い空港を使うことが多いです。「注意点」でも記した通り、これにより余分な移動時間(1~2時間)とお金(15~20ユーロ)がかかりますので、十分注意しましょう。
ちなみに、そのような辺鄙な空港がある自治体の多くはライアンエアに補助金を支払っており、この補助金もライアンエアの大きな収益源となっていることは公然の秘密です。

・空港のカウンターが激混み
ライアンエアは、地上職員も限界まで切り詰めているので、空港の荷物預け入れカウンターは考えられないくらい長蛇の列になります。普通に並んでいると1時間待ち、ということもよくあります。日本人は必ずVISA CHECKの作業(後述)があるので、EU市民よりもさらに時間がかかります。よって、ライアンエアに乗る際は早めに空港に着いておいた方が無難です。

荷物

持込手荷物は、重さ10kg以内でサイズ55cm x 40cm x 20cm以内のもの1点が無料で持ち込めます。これを越えてしまった場合、無条件で預入手荷物となり、1kgあたり20ユーロの手数料を払うことになります。
http://www.ryanair.com/en/terms-and-conditions#regulations-cabinbaggage
預入手荷物は有料です。値段は路線により異なりますが、15kgのものが10~20ユーロ程度です。なお、これを越えてしまった場合、同じく1kgあたり20ユーロの手数料がかかります。
http://www.ryanair.com/en/terms-and-conditions#regulations-checkedbaggage 

座席

自由席です。
ただし、イス取りゲームに参加したくない場合は、事前にPriority Boardingという権利を購入しておけば、他の人より先に搭乗することができます。料金は10ユーロ程度です。

チェックイン

事実上、オンラインチェックイン+ボーディングパスの事前印刷が義務化されています。どちらか片方でも忘れて空港に向かうと、もれなく「空港チェックイン手数料」という謎の手数料を60ユーロも払わされるハメになります。十分ご注意ください。
なお、EU市民(EU Citizen) 以外は、これに加え空港にて搭乗前に「VISA CHECK」という作業が必要になります。長くなるので、項を分けます。

VISA CHECK

ライアンエア独自の面倒な仕組みです。EU市民(EU Citizen)以外は、搭乗ゲートに向かう前に専用カウンターに出頭し「VISA CHECK」という謎の確認作業を受けなければなりません。※EU各国のIDを持っている人(配偶者がEU市民等)以外は、全て対象になります。EUに在住しているかどうかは無関係です。
よって、空港に着いたらまずライアンエアのカウンターに行き、VISA CHECK用のカウンターを確認し、作業を終えてしまいましょう。(空港によって場所が異なります)
オンラインチェックインしているので、VISA CHECKの作業をせず直接搭乗ゲートに行くこともできてしまうのですが、その場合、残念なことに100% 搭乗が拒否されます。例外はありません。もちろん、理論的には猛ダッシュでVISA CHECKのカウンターに戻り、再度搭乗ゲートまで戻って来れば良いのですが、時間的にまず間に合いません。つまり、ほぼ確実にチケットを買いなおすハメになります。しかも、そのフライトが1日何便もあるならまだ良いのですが、1日1便のみの場合は取り返しが付かない事態になります。
VISA CHECK、忘れないよう十分お気をつけください。

安全面

こんなに安くて、安全面は大丈夫?
という疑問も湧くかとおもいますが、事実過度のコストカットが原因と推測される小さい事故はたまに発生しています。最近では、こんなニュースが報じられていました。
・フライトの遅れを取り戻そうとして衝突事故未遂
Ryanair disputes 'near-crash' claim at Memmingen airport
・燃料をギリギリしか積んでいなかったため、天候不良により別の空港への着陸を指示された際、「もう燃料が無いっす」と緊急着陸を要請
Madrid Diversions To Valencia 26 July 
ただ、創業以来30年近くもの間、一度も人命にかかわる大事故は起こしていません。

マイレージ

当然ながら、マイレージプログラムなんてありません。

総評

とにかく安い、ただ安さ故にいろいろ面倒なことが起こる、というLCCの中のLCCです。 
安さを第1に考える方は、検討する価値があると思います。